プロテスタントの牧師、望月麻生(もちづき・あさを)氏のエッセイ集です。
望月氏は1983年生まれ。
祖父は鎌倉彫の職人、実父は造形作家の望月通陽氏(光文社古典新訳文庫の表紙をはじめ、書籍の装丁でも知られる)という芸術家の家系です。
本人は自己紹介で「一家最強の不器用人間」と称していますが、とんでもない!
最近では消しゴム版画家としても知られ、「夜ふかし堂」の名前でさまざまな作品を発表されています。
またピアノやオルガンも弾きこなす音楽家でもあります。
『たからさがし』は、そんなさまざまな芸術的天分(文筆力も含めて)に恵まれた望月牧師が、さまざまな雑誌に掲載したエッセイ24編が収録されています。
掲載されている文章はどれも読みやすく、牧師として、また幼稚園の園長として、子どもや高齢者を包み込むようなやさしさにあふれている文章ばかりです。
聖書の言葉をわかりやすく紹介している章が多いですが、ときどき「くすっ」どころか、のけぞるような実録ギャグ(幼稚園の若い職員がセールスの電話に対し「園長は今、刑務所にいます」と答えたところ相手はドン引き。本当のところは「教誨師」として刑務所訪問をしていた)もあり、機知に富んだ語り口に思わず引き込まれてしまいます。
キリスト教の牧師に、こんな面白い多彩な人がいるのか、と驚く一方で、キリスト教の教えにも興味がわくようになる一冊です。
出版社サイトで、1章まるまる一つを試し読みできます。